週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比4.33ドル高の78.70ドル、ブレント原油は4.85ドル高の84.26ドルとなった。

 前週末の海外原油は小幅続伸。米雇用統計で平均賃金の伸びが鈍化したことから利上げペースの減速が意識され、ドル安に振れたことが相場を支えた。一方で12月ISM非製造業総合指数の低下により景気悪化が警戒されたことは上値を抑えた。

 先週は利上げペース減速への期待からドル安進行したことが相場を押し上げた。週明け9日は続伸。中国が入国時の隔離措置を撤廃したことで買いが先行する展開となったが、来週から中国が春節に入ることにより、コロナ感染状況が悪化するとの懸念から上げ幅を縮小した。10日も続伸。中国のゼロコロナ政策撤廃により石油製品の消費が拡大するとの期待や、EIAが月報で2024年の石油消費が日量1億220万Bまで増加するとの見通しを示したことが材料視された。ただ米12月CPIの発表を控えて様子見ムードが広がり、終盤は調整売りに押される格好となった。11日は続伸。米CPIや企業決算が景気の底堅さを示し、利上げペースの鈍化をもたらすとの期待が相場を押し上げた。EIA統計では原油在庫の大幅増加が示されたものの、昨年末の寒波の影響により製油所の稼働回復が遅れていることが原因としてあまり材料視されなかった模様。12日も続伸。米CPIの鈍化により次回FOMCでの利上げ幅が0.25%になるとの観測が強まったことでドル安にふれたことが要因。また春節をきっかけに中国経済の正常化が加速するとの期待や、EUが来月5日からロシア産石油製品の海上輸入を禁止する予定であることも支援要因となっている。

原油チャート

 今週の原油相場はWTIで80ドル、Brentで85ドルの節目を突破して上抜け期待が高まると想定される。ドルインデックスの底割れでNYダウは33000ドルを挟んだ底練りから上抜け34000ドルを回復しており原油も買われやすい状況となった。独自要因としては2月5日からEUがロシア産石油製品の海上輸入を禁止する予定で原油の時より混乱が懸念される。また、ゼロコロナ政策を転換した中国の原油需要が拡大する見通しとなったことも追い風の形となっている。海外原油は12月の安値を下抜けせず反発したことからNYダウが35000ドルを目指す過程の中でリスクオンの動きから原油相場もWTIで85ドル、Brentで90ドルを伺う展開も想定される。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。