週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比6.26ドル安の82.08ドル、ブレント原油は5.52ドル安の90.07ドルとなった。

 前週末は引き続きドル安が進行したことや、中国が新型コロナに対して入国者の隔離期間を短縮する規制緩和策を発表したことが相場を押し上げた。

 先週は中国で新型コロナが再拡大していることや、ドル安一服から上値重い推移となった。週明け14日は反落。中国でゼロコロナ政策の転換が期待されている一方で、コロナ感染者数が再び拡大していることからゼロコロナ脱却期待が後退した。またウォーラーFRB理事が米10月CPIの結果を受けて利上げペースの減速を示唆したものの、高インフレ抑制に引き続き取り組む強い姿勢を示したことからドル高進行したことも相場を押し下げた。15日は反発。NATO加盟国であるポーランドがミサイル攻撃を受け、2名の死者が発生したことが要因となった。またウクライナがドルジバ・パイプラインの南側ルートを電圧低下のため一時停止させたことも支援要因となった。16日は反落。ドルジバ・パイプラインの稼働再開が重しとなり前日から往って来いの展開となった。またNATO事務総長が、ポーランドに着弾したミサイルがウクライナによる対空ミサイルである可能性が高いとの見解を明らかにしたことも圧迫要因となった模様。ただ、オマーン沿岸で石油タンカーが攻撃を受けたことや、EIA統計で原油在庫が減少したことは相場を下支えした。17日は続落。中国でのコロナ感染拡大から経済的な規制の強化が警戒されていることが相場を圧迫した。また来月以降のFOMCで利上げペースが減速するにしても、想定以上に政策金利が引き上げられるリスクが意識されていることも重しとなった。

原油チャート

 今週の原油相場はレンジ下抜けの展開を予想する。利上げペース減速期待からドル安が相場を支えていたが、ドルも下げ止まっており、リスク選好ムードも後退している。加えて、中国では新型コロナ感染者数が7ヵ月ぶりの規模となっており、ゼロコロナ政策脱却への期待がしぼんでいることは引き続き重しになるだろう。テクニカル的にもWTIでダブルトップ形成から前回安値を割ったことで次の目標は76ドルとなるか。OPECプラスの減産やロシア産原油の締め出しから安値では買いが入ると思われるが、ドル高に反転した場合は株安原油安から大きく売られる展開も想定される。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。