週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は先週比4.23ドル安の89.81ドル、ブレント原油は3.52ドル安の95.87ドルとなった。

 前週末の海外原油市場は反落。ロシアとハンガリーなどを結ぶ「ドルジバ・パイプライン」での原油輸送の再開、メキシコ湾岸の海上油田での生産再開に加えて、ドル高に振れたことが圧迫要因となった。また前日までの上昇を受けた利食い売りも出た模様。

 先週15日は続落。中国の鉱工業生産や小売売上高が低調となったことで景気後退懸念が強まったほか、米ニューヨーク連銀製造業景況指数が予想に反して大幅な低下となったことで売りが優勢となった。リスク回避の動きからドル高となったことも重しとなっている。16日も続落。中国の景気見通しの不透明感が根強く残っているなか、7月米住宅着工件数が年率換算で前月比-9.6%となったことで景気後退懸念が広がった。またイラン核合意の再建協議もイランが最終案に新たな要求を突き付けているようであり、先行きは不透明となっている。17日は反発。EIA統計で原油やガソリン在庫の減少に加えて、石油製品需要の堅調さが示されたことで買いが入る展開となった。またFOMC議事要旨では利上げペースの減速が示唆され、ドル安に振れたことも支えとなった。18日は続伸。米フィラデルフィア連銀製造業景況指数や前週分新規失業保険申請件数が予想より良好な結果となったことで景気悪化懸念が後退した。また、前日のEIA統計でエネルギー需要の堅調さが示されたことや、EUのロシア産原油の禁輸により供給ひっ迫が懸念されていることも支援要因となった模様。

 今週の原油相場は米国内の需給の堅調地合いを受けて底入れ機運が高まるかが焦点。欧州や中国の景気減速懸念は根強いもののNYダウが34000ドルを回復するなど米経済は底堅い動きとなっている。8月のフィラデルフィア連銀景況指数が予想外のプラス、EIA統計でも製品需要の回復が示され原油市場も安値から大きく上昇する流れとなっている。高値では利益確定の売り物に押される展開は継続中だが現物市場の需要は旺盛な状況に変化はない。目先は今週半ばに期限を迎えるイラン核合意協議へのイラン側の回答が注目される。内容次第では上下どちらにも大きく動く材料の為、慎重な対応で臨みたい。

NY原油チャート

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。