週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.62ドル安の97.10ドル、ブレント原油は1.59ドル高の107.02ドルとなった。

 前週末の海外原油は続落。欧州や米国の7月購買担当者景気指数が弱い数字とり、102.24101景気後退懸念が強まったことが重しとなった。ただサウジの生産余力が限られているとの報や、米指標の悪化からFOMCでの大幅利上げが観測が後退したことは下支えとなった模様。

 先週は、前半はFOMCを控えて方向感に欠ける動きとなったが、FOMCにおいて市場予想通り0.75%の利上げとなったことでドル安が相場を支える展開となった。週明け25日は反発。ロシアからドイツへ天然ガスを供給する「ノルドストリーム1」の供給量が水曜日から減少する見通しであることから、供給ひっ迫が意識される格好となった。また米経済指標の悪化により、FRBが秋以降から利上げペースを緩めるとの思惑からドル安に振れたことも支援要因となった。26日は反落。米政府が、3月に発表した1億8,000万BのSPR放出の一環として2,000万Bを放出すると発表したことが重しとなった。またFOMCを控えて神経質な雰囲気のなか、0.75%の利上げが見込まれているものの、1.00%利上げの観測が根強く残っていることも相場を圧迫した。27日は反発。FOMCで0.75%の利上げが決定され、その後の会見でパウエル議長が、今後の指標次第で利上げペースを減速させることが適切と述べ、ドル安に振れたことが相場を押し上げた。またEIA週報で原油やガソリン在庫が大幅な取り崩しとなったことも支援要因となっている。28日は反落。米4-6月期GDP速報値が前期比年率で-0.9%となったことで景気後退入りしたことが圧迫要因となった。またOPECプラス会合を控えて、主要産油国が小幅な増産を検討すると伝わったことも重しとなったようだが、据え置きも協議すると伝わっており、関係筋の発言は一致していない模様。

NY原油チャート

 今週の原油相場はドル安と株高が支えとなる一方、景気後退懸念が重しとなりレンジでの推移となるか。FOMCで1.00%の利上げが警戒されるなか原油や株価も上値重い推移が続いていたが、1.00%が回避されたことで景気減速懸念が後退し、リスクオンムードとなった。さらにロシアとドイツも結ぶ「ノルドストリーム1」のガス供給が21日の再稼働後も20%程度まで減少しており、引き続きエネルギー供給不安が意識されていることも支援要因となるだろう。WTIで95~105ドルのレンジ相場を予想するが、景気後退懸念が残っていることに加えて、来週のOPEC会合において増産合意となれば95ドルを割れる展開も想定しておく必要がありそうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。