週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.46ドル高の105.07ドル、ブレント原油は1.67ドル安の108.54ドルとなった。

 前週末の海外原油は反発。利上げによる景気減速懸念は重しとなったものの、夏場の需要期を迎える中で需給ひっ迫懸念が強まり堅調に推移、またドル高が一服し、株式相場が反発したことも支えとなった。

 先週に入り、月曜~火曜日にかけてはG7においてロシア産原油の価格に上限を設ける案が提出され、同国からの供給が一段と細ることにより需給がひっ迫するとの懸念が強まり続伸となった。G7が検討する上限価格の設定はロシア産石油を輸入する国に対し、価格上限設定に同意する場合に限って輸送船舶への保険提供を認める仕組みとなっており、価格上限に従わない国は保険市場から締め出されることにより、ロシア産原油の輸入が困難となる。また、仏マクロン大統領がサウジやUAEの生産余力は限定的だと語ったことも支援材料となり堅調に推移した。29日は、EIA統計において原油在庫は減少していたものの、石油製品在庫が増加していたことが嫌気されたほか、パウエルFRB議長がECBの年次フォーラムにおいて米経済は金融引き締めに対応できる状況にあると述べたことでドル高進行したことも重しとなり一転反落となった。翌30日も弱い流れは続き、米消費者物価指数の低調な結果を受けた景気後退懸念の強まり、米株安や石油需要の減少懸念が重しとなり上値重い続落。さらにバイデン米大統領が7月中旬に中東諸国を歴訪する際に増産を要請すると表明したことで、下げ幅を拡大する展開となった。



 今週の原油相場は、やや上目線の展開となりそうか。景気後退懸念は多少和らいではいるものの、株式に関してはNYダウ平均株価は3万1000ドル台まで戻した後、3万ドルとび台まで反落し、まだ下値不安は払しょくされず底割れの可能性も残っている。ただし、景気見通しは悪くとも、原油需給面から見れば供給も脆弱であり、大幅下落は考えにくいのではないだろうか。チャート面からは、105ドルを割れたところからの反発でダブルボトムを形成したと見れば、目先は114~5ドル程度を目指す展開となってもおかしくは無いだろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。