週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比3.78ドル安の117.42ドル、ブレント原油は3.00ドル安の119.74ドルとなった。

 前週末の海外原油は米消費者物価指数が予想以上に伸びていたことからFRBが利上げペースを加速させるとの思惑が強まり、ドル高・株安進行したことが重しとなり軟調な推移となった。

 先週は各国中銀が利上げを行う中でドル高・株安進行し、世界経済の後退懸念が強まったことが重しとなり軟調な推移となった。週明けは北京でコロナウィルスのクラスター感染が報告され、景気回復が遅れるとの懸念が強まったことが重しとなった一方、ノルウェーの石油ガス関連施設でストライキが予定されていることや、情勢不安からリビアの原油生産量が減少していることなどが支えとなり、往って来いの展開となった。翌14日はバイデン大統領が7月にサウジアラビアを訪問すると報じられ、エネルギー価格抑制のため増産を要請するとの観測が強まったことが重しとなり軟調な推移となった。翌15日はFOMCにおいて0.75%の利上げが決定し、景気後退で石油需要が減少するとの警戒感が強まったことから大幅続落する格好となった。また、EIA統計において石油需要が節目の2000万Bを下回ったことや、バイデン大統領がガソリン価格引き下げのため主要石油会社に書簡を送り、直ちに増産するよう圧力をかけたことも重しとなった。一方で押し目からは買いが入ると、週末にかけては米国が対イランの追加制裁を発表したことが支えとなり堅調な推移となった。



 米・英・スイスなど各国中銀の利上げにより世界景気後退への懸念が強まっており、リスクオフムードの中で上値重い展開が想定されそうか。また、ロシアの5月の石油生産量が前月比11.4万B増加していたと報じられ、中国やインドへの迂回輸出で西側諸国の経済制裁の効果が思うように上がっておらず、ノバク副首相がEUの禁輸措置に応じて石油生産を減らす必要はないと述べたことも重しとなっている。OPECプラスが生産目標を達成できていないほか、リビアの減産などで引き続き供給不安が強まっていることは支えとなりそうだが、需要の減少が警戒される中で高値を追う展開は想定しづらくなっている。テクニカル的にはWTIベースで120ドル付近が天井となっており、ここを上抜けられなければ節目の110ドルを試す展開となりそうか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。