週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比4.24ドル高の121.20ドル、ブレント原油は4.95ドル高の1122.74ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。EUがロシアに対する追加制裁を正式決定したことで、供給不安が意識される格好となった。また、前日にバイデン大統領が6月末にサウジを訪れて増産要請をする可能性を示唆していたが、前日よりもトーンダウンしていたことも支援要因となった。

 先週はサウジのOSP引き上げや、米国のガソリン在庫の減少から供給ひっ迫が意識され堅調な推移となった。週明け6日は小反落。サウジがアジアや欧州向けのOSPを6.50ドル(+2.10)に引き上げたことや、OPECプラスの実質的な増産幅が限定的であることから一時買われる場面も見られた。しかし米ガソリン小売価格が過去最高水準で推移しており需要が抑えられるとの見方や、米長期金利の上昇からドル高に振れたことが重しとなった。7日は反発。世界銀行が発表した経済見通しで、22年の実質GDPが前回から下方修正されたことが重しとなった一方で、北京や上海で経済活動が再開に向かっていることやイラン核合意協議が進展していないことが支援要因となり反発となった。8日は続伸。引き続き需給ひっ迫感が支えとなるなか、EIA週報でガソリン在庫が予想に反して減少となったことが相場を押し上げた。製油所稼働率は94.2%と今年最高水準を更新したものの、ガソリン在庫は過去5年のレンジ下限を大きく下回って推移している。9日は反落。上海の一部地区で再び都市封鎖が導入されたことが重しとなっている。また米株価も軟調に推移し、ドル高に振れたことも圧迫要因となっているが、米国のガソリン需要が高まっていることは相場を下支えした模様。



 今週の原油相場はWTI7月限は一代新高値を更新、上値余地が拡大して130ドルを目指す可能性も。WTIは目先の上値抵抗とみられた120ドルを8日に上抜けると一気に123.18ドルまで急騰、明らかにレベル感が変わった相場となった。週末に上海の一部で再ロックダウンが検討されているとの懸念から株安、原油安となったが、安値での買い意欲は強い印象だった。米国ではドライブシーズン入りとなり今年最高の製油所稼働率となってもガソリン在庫は減少しており需要の旺盛さが原油の買い安心感となっている。目先は中国のロックダウンや欧米の金融引き締めによる景気後退懸念から調整局面を迎える可能性もあるが、石油製品の需給は世界的にタイトな状況が続いており、積極的に押し目買い方針で臨みたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。