週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比3.19ドル高の116.96ドル、ブレント原油は0.7ドル高の117.79ドルとなった。

 前週末27日は上昇した。米国では週末のメモリアルデーからガソリン需要が盛り上がると見られていることや上海のロックダウン解除が近づいていることによる需要の高まりが意識された。

 週明け30日は続伸し2カ月ぶり高値を付けた。米国市場はメモリアルデーで祝日であったが、上海が1日より2カ月続いたロックダウンを解除することやEUがロシア産石油の禁輸合意見込みであることが買い材料となった。翌31日は小幅に反落となった。OPEC+が現行の生産協定からロシアを除外する検討をするとの報や、ロシア産の供給不足を補うため追加増産の可能性があると報じられたことが材料となった。翌1日は反発した。EUがロシア産石油の大部分を年内に禁輸することで合意したことや対ロシアの制裁の一環としてロシア産を輸送するタンカーに対し保険市場への締め出しを決めたと報じられたこと等が意識された。翌2日は続伸となった。OPEC+の会合を控え、予想外の大幅増産に対する警戒から売りが先行したが、7、8月に65万Bずつの増産との報を受け切り返した。その後、米EIA石油統計で原油・石油製品ともに取り崩しが示され、上げ幅を拡大する動きとなった。なお、OPEC+の決定は9月の増産幅を前倒しただけとの見方が優勢だ。週末3日は、米雇用統計を控えた整理商いからか上値重く推移したものの、前日までの流れを引き継ぎプラスサイドまで切り返す動きとなった。



 EUのロシア産の年内禁輸、今後拡大する可能性は捨てきれないがOPEC+の小幅にとどまる増産、米国のドライブシーズン、中国の需要回復など強い材料が多い状況である。対して、価格上昇による需要減、米国の利上げやウクライナ・ロシア情勢等による景気見通しの悪化等が下落要因といえそうだ。原油自体にはあまり今のところ弱い材料が非常に少ないといえる。テクニカル的には高値を上抜くと急上昇するリスクがあると同時に、高値圏にあるにもかかわらず下値を切り上げており、上昇トレンドが継続している。WTIやブレントの期近つなぎ足で上値がパッとしないように見えるのは、バック幅が非常に大きい期近の限月交代の影響が大きいと考えるべきだろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。