週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比4.62ドル高の111.65ドル、ブレント原油は2.79ドル高の111.41ドルとなった。

 前週末の海外原油は中国が景気支援策を表明したことで石油需要の回復期待が高まったほか、スウェーデンやフィンランドがNATOへの加盟申請方針を明らかにし、北欧での緊張感の高まりが意識されたことが支えとなり堅調な推移となった。

 先週は中国のコロナウィルス新規感染者数が減少傾向にあることからロックダウンの緩和方針が示唆されたほか、米国の製油能力不足やドライブシーズン入りが意識される中でガソリン価格が高騰していることなどが支えとなり堅調な推移となった。一方でEUによるロシア産原油禁輸の合意が難航していることや、インフレ進行への警戒感からドル高・株安が進み、リスクオフムードが強まったことは重しとなり上げ幅を縮小する動きとなった。週明けは中国でのコロナウィルスの流行が落ち着き、ロックダウンが徐々に緩和される見通しとなったことが支えとなったほか、EUがロシア産原油の禁輸について今月末までに加盟国内での合意を目指す考えを示したことが支えとなり上昇した。翌17日は米国がベネズエラ産原油の輸入禁止を一部解除すると伝わったことで供給不安が後退し下落した。翌18日は米小売り大手の決算が振るわず、インフレ高進行への警戒感が強まったことでドル高・株安が進行し、リスクオフムードが強まったことから原油も軟調な動きとなった。また、EUによるロシア産原油禁輸の合意がハンガリーの反対を受けて難航していると伝わったことも重しとなった。週末にかけては中国が6月からコロナ対策の緩和を計画していることが支えとなったほか、米長期金利の低下からドル高一服となったことも好感され堅調な推移となった。



 今週の原油相場は引き続きレンジ内での推移が想定されそうか。コロナ新規感染者数が減少傾向にある中国でロックダウン解除の動きがみられることや、フィンランド・スウェーデンのNATO加盟申請方針をロシアが強くけん制しており、北欧の緊張感が高まっていることは支えとなっている。一方で米小売り大手の減益決算を端に発したインフレへの警戒感からリスク回避ムードが強まっており、ドル高・株安進行していることや、景気後退懸念から石油需要の減少が警戒されていることなどが重しとなる中で上値も重くなりやすそうであり、強弱材料が交錯する中でWTIベースでは100~115ドルでの推移が想定されそうだ。難航しているEUによるロシア産原油の禁輸が合意でまとまれば上抜ける可能性もありそうだが、目先はレンジ相場とみれば上限・下限での逆張りが有効となりそうか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。