週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比2.07ドル安の96.96ドル、ブレント原油は2.06ドル安の101.53ドルとなった。

 前週末の海外原油は続落。米国のSPR放出やIEAの閣僚会議で各国が備蓄を協調放出をすることで合意したことが重しとなった。ただ週末のポジション調整の動きから買戻しも入り、下げ幅を縮小する展開となった。

 先週はウクライナ情勢で急騰したものの、その後は石油備蓄放出やドル高の進行により週末にかけては売りが優勢となった。週明け4日は反発。ウクライナで多数の民間人の遺体が見つかったことでロシアに対する批判が強まり、追加制裁が行われる見通しであることから供給不安が意識されている。備蓄放出による売りは一巡し、追加制裁により放出の効果も限定的となる見通しである。5日は反落。西側諸国がロシアへの追加制裁を検討し始めたものの、EUがロシアからの天然ガスや原油の禁輸には踏み切れないことが圧迫要因となった。またドル高や中国でのロックダウン延長も重しとなった模様。6日は続落。IEA加盟国が米国に続き6,000万Bの石油備蓄放出を決めたことで売りが優勢となった。またEIA週報でも原油在庫が予想に反して増加となり、石油製品需要が2月以降減少を続けていることも要因となっている。7日は小幅反落。引き続き石油主要消費国による備蓄放出や中国のコロナ拡大が重しとなった。しかし4月以降、ロシア産原油の供給量が日量300万b程度減少するとみられており、制裁によって供給下振れが続くことで安値から切り返す展開となっている。



 今週の原油相場は底堅い動きとなりそうか。米国の石油備蓄放出に続き、IEAも6,000万Bの放出を決めたことで合計2憶4,000万Bが市場に供給される見込みとなっているが、世界の石油需要の約2.5日分であり効果は限定的と思われる。またOPECプラスは5月の増産目標を引き上げなかったため引き続き供給不足が懸念される状況となるだろう。また米国はロシア軍による民間人への非人道的な行為によりロシア最大手の国有銀行の資産凍結を発表し、EUでもエネルギーを軸とした追加制裁が検討されていることから、ロシア産以外のエネルギー需要が一段と高まる見通しである。中国でロックダウンが続いていることは目先重しになると思われるが、引き続き下値は底堅いと予想する。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。