週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比6.35ドル高の112.41ドル、ブレント原油は9.96ドル高の119.29ドルとなった。

 前週末の海外原油はウクライナ侵攻を続けるロシアからの原油供給が大幅に減少していることや、株式市場が反発していることなどが支えとなる中で堅調な推移となった。

 先週もロシアとウクライナ情勢に上下する展開となった。週明けはウクライナ侵攻を続けるロシアに対してEU諸国もロシア産原油の輸入停止を検討していると伝わったことから大幅上昇した。また、サウジアラビアの石油施設がイエメン武装組織のフーシ派によって攻撃を受けたと伝わったことも支えとなった。翌22日はロシア産原油の禁輸に関してEUでの合意が見送られたことが重しとなり反落した。欧州はロシアへのエネルギー依存比率が高く、ドイツやオランダなどが即時対応は困難との見方を示した模様だ。翌24日はAPI統計で原油在庫が430万B減少と大幅に取り崩しが進んだことでアジア時間から堅調な推移となると、カザフスタンとロシアの黒海を繋ぐCPCパイプラインが悪天候により損傷を受け、日量120万Bの原油輸出が停止したと伝わったことから大幅上昇した。また、プーチン大統領がロシア産天然ガスについて支払いをルーブルに限定すると述べ、ロシア産以外のガス・原油に需要が集中するとの思惑が強まったことも買いを誘った。週末にかけては戻り売りの動きから反落すると、EUがロシア産原油の禁輸に踏み切れないことや、CPCパイプラインが一部稼働を再開すると伝わったことから供給ひっ迫懸念が後退し軟調な推移となった。



 引き続きロシアとウクライナの戦況に上下する展開が想定される。注目されていたEUによるロシア産原油の禁輸は合意が見送られており、依存度の高い欧州での禁輸措置は難しいとみられている。一方でロシア産化石燃料への依存脱却に向けて米欧での協力が発表され、ドイツが年内にはロシアへのエネルギー依存脱却を目指す方針を示したことからは支えとなりそうであり、ロシア産以外のエネルギー需要はさらに高まりそうか。シェールオイルの増産や米国による戦略備蓄の放出が検討されていることは重しとなりそうだが、引き続き供給混乱への懸念から下値は底堅そうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。