週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.38ドル安の106.74ドル、ブレント原油は1.38ドル安の110.13ドルとなった。

 前週末の海外原油は暴騰。ロシアが欧州最大級の原発を制圧したとの報や、6日には米国務長官が欧州同盟国とロシア産原油の輸入禁止を積極的に協議していると述べるなどウクライナ情勢の緊張がさらに高まったことが要因。

 週明け7日は続伸。ロシアからの石油輸入禁止を検討しているとの報で時間外に急騰となったが、ロシアに依存している欧州では非現実的との見方が強く、高値から大きく値を削る展開となった。ただイラン核協議の先行きが不透明となっていることは引き続き支えとなっている模様。8日も続伸。米バイデン大統領がロシアからの原油や天然ガスの輸入を禁止する大統領令に署名したことが相場を押し上げた。英国もロシア産原油や石油製品の輸入を段階的に削減すると発表し、年末までには完全に停止するとしている。ただウクライナのゼレンスキー大統領が「NATO加盟をウクライナはもはや主張していない」と述べたことは重しとなったようである。9日は一転、WTIで15ドル、ブレントで17ドル近くの大暴落。国際エネルギー機関(IEA)事務局長が価格抑制のため一段の石油備蓄の放出が可能との見解を示したことや、ロシアへの経済制裁により石油供給が混乱している状況を鑑みてOPECに生産拡大を促すとUAEが述べたことが供給逼迫懸念を後退させ、また、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATOへの早期加盟を断念する考えを示唆したことから停戦の可能性が高まるとの思惑が強まって、これまで急ピッチで上昇を続けていた反動もあり売りが殺到する展開となった。翌10日も、一時値位置を切り上げたものの買いは続かず、引き続きUAEがOPECプラスの増産を呼びかけたことが重しとなったほか、ロシアのプーチン大統領がエネルギー供給に関する契約上の義務は履行すると発言するなと供給懸念が後退したことから続落となった。



 乱高下している原油マーケットだが、今週も予断を許さない環境は続きそうだ。材料的としては、引き続きロシア⇔ウクライナ状況と、付随する国際社会の対ロシア経済制裁やウクライナ支援に関するニュースが注目される。米国は、バイデン大統領が難色を示しているとしたロシア産エネルギーの輸入禁止を一転して発表し、英国もそれに倣った。英国を除く欧州各国のロシア産原油輸入がどの程度まで削減されるかは不明で、またOPECのバルキンド事務局長は、「埋め合わせる余剰能力は世界にはない」と懸念を示している。主要産油国のうち日量数百万バレルの増産余力があるのはサウジアラビアとUAEであると言われているが、米国がサウジ、UAEへ首脳電話会談申し込んだが拒否されたとも報じられており、先行きの不透明感は強まっている。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。