週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比5.02ドル高の96.39ドル、ブレント原油は4.88ドル高の97.49ドルとなった。

 前週末の海外原油は続落となった。イラン核合意が妥結に向かっていることでイラン産原油が供給されるとの見通しのほか、米ロ会談が今週に予定されたことでウクライナ侵攻への警戒感が後退したことが圧迫要因となった。

 週明け21日は反発。米国市場がプレジンツデーで休場となるなか、週末に露プーチン大統領がウクライナ東部の2州を共和国として承認する大統領令に署名をしたことで、再びロシアのウクライナ侵攻への警戒感が高まった。22日は続伸。ウクライナ情勢の緊迫化が相場を押し上げたが、欧米諸国がロシアに対する経済制裁を発表したことでリスクオフムードが広がり、株安となったことも原油の利益確定売りに繋がった。23日は小幅続伸。引き続きウクライナ情勢の緊迫化が支えとなるなかで、この日はロシアの本格的な侵攻も行われていないことから上げ一服となった。イラン核合意再建は妥結に向かっているものの、最終的な合意はできておらずイラン産原油の供給回復は未だ不透明となっている。また予定されていた米ロ首脳会談は中止となった。24日は続伸。ロシアがウクライナへ軍事侵攻をしたことでエネルギー供給の混乱が意識され大幅高となる場面が見られた。ただ、その後は世界景気の回復が遅れることで石油需要の後退が意識されたことやドル高が重しとなり高値から大きく下げる動きとなった。EIA統計では原油在庫が予想を上回る大幅増加となったが、ウクライナ情勢が意識されるなかであまり材料視はされなかったか。



 24日にロシアがウクライナに軍事侵攻をしたことからWTIで100.51ドル、ブレントは105.79ドルまで急騰、2014年以来の高値を付けた。ただ、週末時点では共に高値から一時9ドル近く下落する値動きの荒い展開となった。目先はウクライナ情勢次第で乱高下を繰り返す動きが続きそうだ。ただ、欧米のロシアに対する経済制裁が嫌気され株安、景気後退懸念となるようだとリスクオフの流れとなり原油価格も上げにくくなりそうだ。また、イランの核合意で進展がみられるようだと大きな調整局面を迎える可能性も否定できない。現状は噂で買われて事実で売られる展開ともいえる為、強気一辺倒には注意が必要だろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。