週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.91ドル高の91.37ドル、ブレント原油は1.36ドル高の92.61ドルとなった。

 前週末の海外原油は米国や英国など複数の国が自国民に対しウクライナから直ちに退避するよう勧告するなど、ウクライナ情勢の緊張感が高まっていることから急騰する格好となった。

 先週は引き続きウクライナ情勢の緊迫化が支えとなる中で堅調な推移となったものの、週末にかけてイラン核合意の再建協議が大詰めを迎えていると報じられたことで売りが強まると、高値から切り返す格好となり上げ幅を縮小した。週明けは米CBSがウクライナ国境周辺地配置されているロシア軍のロケット部隊が攻撃態勢に入ったと報じたことや、ロシアによるウクライナ侵攻が16日にも行われるとの情報が伝わったことで警戒感が高まり続伸した。翌15日は戻り売りの動きが強まると、ウクライナ国境周辺で軍事演習を行っていたロシア軍が一部撤収を開始したと伝わったことで軍事的緊張感が後退し反落した。翌16日は前日に下落した押し目買いの動きから堅調な推移となると、引き続きウクライナ情勢の緊迫化を背景に上昇する展開となった。一方で時間外にかけてイラン核合意の再建協議が最終段階に入っていると報じられると、週末にかけては戻りを売られる格好となった。



 引き続きウクライナ情勢とイラン核合意の再建協議に関する情報で一喜一憂する展開が想定される。今週後半にも米ロ外相による会談が実施される予定となっており、軍事的緊張感が緩和すれば戻り売りが強まる展開も想定される。また、イラン核合意の再建協議が間もなく妥結すると報じられており、実現すればさらに価格が崩れる展開となってもおかしくはなさそうだ。一方でロシアの軍事侵攻など有事の際には簡単に100ドルを突破する展開となりそうであるほか、現状の事実としてウクライナ政府軍と新ロシア派が支配する同国東部地域で交戦が始まっているとの情報もあり、ウクライナ情勢は予断を許さない展開となっている。引き続き上下に振り幅の大きな展開が想定されるため取引には細心の注意を払いたいところだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。