週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.82ドル高の83.99ドル、ブレント原油は2.21ドル高の86.95ドルとなった。

 前週末の海外原油は反発。引き続き投資不足や脱炭素の動きから一部産油国の生産が伸びずに供給不足が意識されていることに加え、ロシアのウクライナ侵攻に対する懸念が支援要因となり相場を押し上げた。

 先週は地政学リスクへの警戒感やイラク-トルコ間のパイプラインの停止などで上昇となったが、週末にかけては在庫増加やFOMC前の調整などから上値重い推移となった。週明け17日は反発。米国市場がキング牧師生誕日で休場となるなか、需給ひっ迫が意識がされていることに加えて、UAEの首都アブダビがイエメンフーシはによる攻撃を受けたことで地政学リスクの高まったことが要因となった。18日は大幅続伸。ロシアとウクライナ情勢の緊迫化に加えて、サウジ主導の連合軍がフーシ派が支配するイエメン首都サヌアを空爆したことがさらに地政学リスクが高まった。またイラクとトルコを結ぶ石油パイプラインが爆発により停止したことが相場を押し上げる展開となった。19日も続伸。引き続き地政学リスクへの懸念や、ドル安金利安が支えとなり序盤は大きく上昇する場面も見られたが、その後はパイプラインの復旧や金利高、株安から原油も売られリスクオフの動きとなった。なお、パイプラインの爆発はテロではなく送電塔の転倒によるものであるとしている。日本時間朝方発表のAPI統計では原油在庫が140万Bの増加となった。20日は小反落。序盤は米株価も堅調に推移し、地政学リスクへの懸念から上昇となっていたが、EIA統計で原油在庫が+50万Bと予想に反したことや、ガソリンも予想を大きく上回る積み増しとなったことが嫌気され反落する動きとなっている。またFOMCを来週に控えて利上げへの警戒感から株価も反転しマイナス、ドル高となったことも重しとなった。



 今週の原油相場は米FOMCを迎えた金融市場の動きが原油市場のメインとなると想定される。WTI3月物は20日に87.10ドルの一代高値を付けた後、8週間ぶりに米原油在庫が増加したことから大きく上値を削る展開となり、目先の天井を示唆する形となった。米株式市場が下落が先行する修正安局面となり、原油市場の外部環境は悪化している。ただ、独自要因の地政学リスクや米国の寒波見通しが2月にかけて本格化することを考慮すると、WTIで80ドルレベルまでの修正安で終わる可能性が強そうだ。18日に発表されたOPECの月報でも2022年の世界石油需要は日量1億80万Bと前年比420万B増が見込まれ、供給懸念が常につきまとう見通しとなっている。中長期的な上昇トレンドは継続とみて買い場探しの週となるだろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。