週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.87ドル高の70.62ドル、ブレント原油は3.17ドル高の74.01ドルとなった。

 前週末の海外原油はオミクロン株が各国に拡散し流行を広げることで、景気後退や石油需要の減少が懸念され上値重い推移となった。また、OPECプラスが来年1月も日量40万Bの増産を維持すると決定したことも重しとなった模様だ。

 先週は先週に急落した買い戻しの動きから堅調に推移すると、オミクロン株への懸念が後退する中でリスクオンムードが強まったことに支えられた。週明け6日は米政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士がオミクロン株について、これまでのところ重症化する様子はあまり見られていないとの認識を示したことでリスクオフムードが後退し堅調な推移となった。また、イラン核合意の修復協議が難航していると報じられたことも支えとなった。翌7日もオミクロン株は重症化リスクが低い可能性があるとの見方が支えとなったほか、米金融大手のJPモルガンやゴールドマンサックスが産油国の生産能力不足を理由に強気見通しを示し、2022年の高値目標として125ドルを掲げたことからファンドの買い戻しが入り上昇した。リポートでは急速な再生エネルギーへのシフトによって石油産業への投資が細り、産油国の生産余力が枯渇に向かうとの指摘があった模様だ。翌8日は米ファイザー製ワクチンを3回摂取することで、オミクロン株への高い感染予防効果が期待できると報じられたことが支えとなり上昇した。一方で南アフリカや米国でコロナ感染者数が増加傾向にあり、英国では個人の外出規制強化が打ち出されるなど移動制限措置が広まっていることは重しとなった。翌9日は英国やデンマークがコロナ感染症対策として移動制限措置を強めていることが重しとなったほか、中国不動産大手・中国恒大集団が一部債務不履行と認定されたことが嫌気され軟調な推移となった。



 前週はオミクロン株への懸念から急落したものの、先週は短期的な売られすぎ感からV字回復する形で上昇すると、WTIベースで半値戻しとなる73ドルまで値を戻す格好となった。引き続きオミクロン株関連のニュースで上下する展開が想定されそうだが、目先は70ドルに定着できるかが注目されるところだ。強材料としてはオミクロン株は重症化する可能性が低いとみられていることやイラン核合意の再建協議が難航していることなどがあげられる一方、欧州を中心にデルタ株の感染拡大が強まっていることや、中国恒大集団が一部債務不履行と認定されたことによる中国経済への不透明感などが重しとなっており、戻りは利食い売りが出やすくなっている。来週にFOMCを控える中で様子見姿勢が強まっていることも考慮すると、目先は横ばいでの推移が想定されそうであり、一方に偏向して考えるのは危険そうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。