週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比1.10ドル安の79.83ドル、ブレント原油は変わらずの82.17ドルとなった。

 前週末の海外原油は反落。米インフレ懸念が再燃するなかでFRBが早期利上げに動くとの見方から、金利上昇ドル高により売られる格好となった。しかし米国株が堅調に推移したことや安値では買戻しの動きから下値は支えられた。

 先週は欧州で新型コロナウイルスが拡大傾向にあることや需給バランスが和らぐとの見通しから上値重い推移となった。週明け15日は小反発。米国の早期利上げ懸念やドイツなど欧州の一部の国で新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を更新していること、米国のSPR追加放出観測などが圧迫要因となり売りが先行したが、安値拾いの買いや在庫統計前の持ち高調整から下げ幅を縮小し、往ってこいの展開となった。16日は小反落。引き続き米国のSPR放出観測や米小売売上高が予想を上回りドル高となったことが重しとなるなか、需給のタイト感が下支えとなった。17日は小反落。IEAが供給拡大により需給環境が和らぐ兆候があると指摘したことが重しとなった。またOPEC事務局長は、早ければ12月以降に市場のバランスは供給過剰に傾くとの見解を示している。EIA統計で原油や石油製品の在庫減少が示されたが、ほとんど材料視はされなかった模様。18日は反発。11月のフィラデルフィア連銀景況指数が市場予想を上回ったことや、対ユーロでのドル安が支援要因となった。また前日に6週間ぶりの安値を付けたことから安値拾いの買いも入る展開となった。



 今週の原油相場は調整局面となるか。ここまで需給のタイト感に支えられてきた相場だが、早期利上げ観測によるドル高や、欧州の新型コロナ再拡大懸念などが圧迫要因となり上値が重くなってきている。加えてOPECプラスが月報で需要見通しを引き下げたことや、IEAが供給拡大の兆候を示したことで需給ひっ迫懸念は後退し、またWTIで11月4日に付けた安値の78.25ドルを割ったことでテクニカル的にも売られやすい状況になっていると思われる。石油消費国のSPR放出も意識されるなか、目先大きな買い材料は乏しく、下値のめどは75ドルといったところか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。