週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比0.96ドル安の68.45ドル、ブレント原油は0.92ドル安の70.73ドルとなった。

 前週末の海外原油マーケットは、米雇用統計が予想以上に好調な内容だったことからドル高進行したことが嫌気され下落。

 週明けにかけても軟調な流れを引き継ぎ、下げ幅を拡大する展開となった。中国をはじめとしたアジア各地で新型コロナデルタ株封じ込めの制限措置が再導入され、燃料需要の回復が遅れるとの見方が強まっていることも重しとなり、下値を切り下げた。10日は前週から前日まで続いた下落を受けて買い戻し優勢となり、コロナ禍でも米国の石油需要が堅調であり、2020年のガソリン需要見通しを上回る見込みと伝わったことが好感され堅調な推移となった。11日も続伸。バイデン政権がOPECプラスに対して増産を要求していると伝わったことが重しとなり上値重い場面も見受けられたが、米政府が主要産油国への要求は長期的なものであり即時的な対応を求めていないと発表したこと、及び米国内の産油業者には増産を求めない考えを示したことが支えとなり反転し上値を切り上げる展開となった。米国の生産量は停滞を続けており、EIA週報では米原油生産量は日量1130万バレル(新型コロナ前:日量1300万バレル超の水準)となっている。ただし、買いの流れは続かず翌12日は小幅に反落。OPEC月報において2021年の世界の需要見通しがほぼ据え置かれたことが支えとなった一方、IEA月報においてコロナデルタ株の流行により7月の石油需要の伸びが急激に鈍化したとの見方が示されたことが重しとなった。



 今週の原油マーケットは、WTIで70ドル前後、Brentで72ドル前後のレンジ相場が想定される。テクニカル面では、先週末から今週の初めにかけた下落からの切り返しで、WTIで65ドル、Brentで67ドル半ばでダブルボトムを形成し、下値の堅さが見受けられる。しかしながら、新型コロナデルタ株の流行拡大による需要回復懸念が引き続き弱材料となっており、積極的には上値を追いにくい環境だ。今後の需要回復見通しに関しては、OPEC月報では据え置き、IEA月報では下方修正され見方が分かれており、それだけ不透明感が強いともいえる。前述のように、価格の上昇にも関わらず米国の生産は増えておらず、強弱材料が入り混じっており、上がれば戻りを売られ、下がれば押し目を買われやすい展開になりやすいだろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。