週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比 6.47ドル安の59.21ドル、ブレント原油は同6.67ドル安の62.67ドルとなった。

 前週末の海外原油は反落。米国株の高値更新が続いていることで下げ幅は抑えられたものの、ドル安一服とブレント原油が70ドル台目前から利食い売りで軟化したことが嫌気された。

 先週はアストラゼネカ製ワクチンの使用を見送る国が多いことで景気、石油需要の回復が遅れる可能性があることから利益確定の売りが優勢となり大きく値を下げる展開となった。週明け15日は続落。バイデン米政権が景気対策の財源を補うために増税を検討していることが重しとなった。また16日からのFOMCで米金利のさらなる上昇が警戒されていることも嫌気された模様。16日も続落。欧州でアストラゼネカ製ワクチンの接種を一部見送る動きが拡大していることや、今週のEIA在庫統計で原油在庫が増加する見通しであることも圧迫要因となった。17日は続落。欧州で引き続きコロナウイルスが根強く流行し、世界的な景気や石油需要の回復が遅れるとの見通しが重しとなった。またEIA在庫統計で原油・製品在庫がともに増加となったがあまり材料視はされなかった模様。その後はFOMCで利上げには依然慎重であるとの認識が強まったことでドル安に振れ、米株価が値を持ち直したことにより原油も下げ幅を縮小する展開となった。18日は急落。前日にEIAが、国際エネルギー機関(IEA)の「原油相場が供給不足に陥る可能性がある」との観測を否定したことやドル高に伴う割高感からほぼ一本調子で下落した。



 今週の原油相場は修正安後の出直し相場になると予想される。昨年11月以来、大きな修正安なしに上昇を続けた原油相場に3月期末を前に調整局面となった形だ。18日の急落は欧州の新型コロナ再拡大懸念、米長期金利の上昇によるドル高、最高値更新を続けた米ナスダック市場の急落と季節的なポジション調整の側面が強い。引値ベースでは3月頭の安値を割れずに戻しており、現状は一時的な調整局面との見方が妥当とみる。ゴールドマンサックスもブレント原油がこの夏に80ドルを目指すとの強気の見方を変えておらず押し目買いを推奨している。目先はリスク資産売りにつながる米長期金利の上昇がどこまで続くのかが焦点となりそうだが、NYダウは高値圏を維持しており原油単独での下げの可能性は低いとみられ、今後数日間で下値の堅さを確認できる展開になると予想する。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。