週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比 1.14高の57.79ドル、ブレント原油は同1.49ドル高の60.69ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。雇用統計で良い数字が出た場合に経済対策不要論が浮上するのと懸念があったものの、雇用の伸びが予想を下回る内容だったことから追加経済対策が必要との認識が強まる格好となり、堅調な推移となった。

 先週はOPECプラスが減産を続ける中で、米追加経済対策やワクチン普及により景気が回復に向かえば原油需要も上向くとの期待感が支えとなり約1年ぶりの高値まで上昇した。週明けはバイデン大統領がイランに対し核合意を順守するまで制裁を続ける意向を示した一方、イラン側は制裁の解除が核合意履行の条件であるとしており、引き続きイラン産原油の流通が制限される見通しとなったことが好感され堅調な推移となった。翌9日は米EIAが2021年の原油生産量の見通しを下方修正したことが好感されたほか、ドル安推移や原油在庫の減少予想などが支えとなり続伸した。翌10日はEIA統計において原油在庫が予想以上に減少していたことが好感され上昇すると、ブレント原油で9営業日、WTIで8営業日続伸と約2年ぶりの連騰を記録する格好となった。ただし直近の上昇に対する高値警戒感から戻りは売られると、週末にかけては米株の上値が重かったことやOPEC及びIEAの月報において2021年1-3月期の石油需要見通しが引き下げられたことが嫌気され反落した。



 中国勢が春節入りの中、調整安となりやすいとみる。産油国サイドもサウジなどは欧州向けの調整金を正常化させ、今後供給サイドからの強気材料はハプニング的な(地政学等)もの以外は出にくくなったといえるのではないか。依然として長期的な流れは上向きを支持するかもしれないが、株式市場同様に足早に原油市場も正常化を意識した動きをしたことから目先上値を追う材料に欠くだろう。先々、需要回復の際の供給サイドの在り方が焦点となるが、産油国側も極端な増産スタンス示さないと見受けられ、下落局面は段階的に期先押し目買いで対応すべきか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。