週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比3.15ドル高の40.52ドル、ブレント原油は同3.15ドル高の43.04ドルとなった。

 前週末の海外原油マーケットは続落。米雇用統計などの好調な経済指標やドル安の動きは支えとなったものの、法廷闘争に持ち込まれそうな雲行きとなった米大統領選への不透明感やリグ稼働数の増加が嫌気された。ただし、その後はバイデン氏が当選を確実にしたとの報からリスクオンの動きが強まり、下げ幅を縮小する動きとなった。

 週明けは、米製薬大手ファイザーが開発中のワクチン候補の臨床試験で9割以上の被験者に感染防止効果がみられたとの報が好感され急騰、WTI、ブレント共に3ドル近く値を上げた。また、サウジアラビアが他の産油国とともに現行の協調減産体制を調整する可能性があると述べたことも支えとなった模様だ。10日も、引き続きコロナワクチン開発への期待感の高まりから買いが入り続伸、株式と共に連騰となった。さらに翌11日も連日の流れでワクチン期待から上昇、WTIベースでは一時9月初め以来なる43.06ドルを付けるなど堅調な推移となる。ただし買い一巡後は戻り売りに押され、NYダウがマイナスに転じたことやOPECが公表した月報にて今年の石油需要見通しが下方修正されたこと等から上げ幅を縮小し、前日比ほぼ変わらずまで値位置を切り下げることとなった。木曜日は、米国にて新型コロナウィルスの1日当たりの感染者数が連日10万人を上回っており、パウエル米FRB議長が米経済について今後数週間は厳しい状況が続くだろうと述べたことが嫌気され反落となる。また、OPEC月報に続きIEA月報においても需要見通しが下方修正されたこと、EIA在庫にて原油在庫の増加が示されたこと等も重しとなり、値位置を切り下げた。

原油チャート

 先週大きく値を伸ばした原油マーケットだが、水曜日に高値(WTIで43.06)を付けた後は売られる展開が続いており、目先は40ドルを維持できるかが焦点となりそうか。強材料はやはりワクチンのニュースで、続報も含めて期待感が株式を含めてマーケットを覆っており、大きくは売られにくい。一方、弱材料としてコロナ感染者の急速な拡がりとIEAやOPECによる石油需要見通しの下方修正が横たわる。来週は16及び17日にOPECプラスの委員会が開かれ、月末の総会に向けて増産の見送りまたは減産強化で話し合われる模様で、要人発言に要注目である。いずれにしても、下がったところでは押し目買いが相当程度入ってきそうな相場付きであり、大幅下落は考えづらいものの、目先は下値固めとしてやや下方向、その後緩やかに戻すようなもみ合い展開が想定される。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。